アンテナのデータシートの読み方:VSWR、リターンロス、利得、効率
2つのアンテナがどちらも「利得3 dBi」「VSWR < 2.0」をうたっていても、製品に組み込むと性能が大きく異なることがあります。データシートは、各数値が何を測定したものか、そして何が含まれていないかを理解して初めて役に立ちます。本ガイドでは、ほぼすべてのアンテナのデータシートに登場する数値を順に取り上げ、公平に比較する方法をご紹介します。
VSWRとリターンロス:アンテナが電力をどれだけ受け入れるか
どちらの数値も同じことを表しています。すなわち、アンテナのインピーダンスが、接続先の50 Ωシステムにどれだけ整合しているかです。整合が不完全な場合、アンテナに送られた電力の一部は放射されず、無線機側へ反射されます。
VSWR(Voltage Standing Wave Ratio、電圧定在波比)は、1.5:1または単に1.5のような比で表記され、完全な整合は1.0です。リターンロスは同じ反射をデシベルで表したもので、数値が大きいほど良好です。両者は反射係数Γを介して換算できます:Γ = (VSWR − 1) / (VSWR + 1)、リターンロス = −20 log₁₀ Γ。
| VSWR | リターンロス | 反射電力 | 不整合損失 |
|---|---|---|---|
| 1.2 | 20.8 dB | 0.8% | 0.04 dB |
| 1.5 | 14.0 dB | 4.0% | 0.18 dB |
| 2.0 | 9.5 dB | 11.1% | 0.51 dB |
| 2.5 | 7.4 dB | 18.4% | 0.88 dB |
| 3.0 | 6.0 dB | 25.0% | 1.25 dB |
この表から、「VSWR ≤ 2.0」がなぜこれほど一般的な仕様なのかがわかります。この時点でも電力の約89%はアンテナに受け入れられ、損失はわずか0.5 dBです。698 MHzから4 GHzまでをカバーしなければならない広帯域セルラーアンテナでは、帯域端で最大3.0と規定されることが多く、この帯域幅では一般的な値です。
注意点が2つあります。1つ目は、VSWRの数値がどの周波数範囲に適用されるかを確認することです。中心周波数での値が1つ示されているだけでは、帯域端についてはほとんどわかりません。2つ目は、良好なVSWRが証明するのは電力が反射されていないことだけだという点です。電力が放射されていることの証明にはなりません。損失の大きいアンテナや、50 Ωの抵抗でさえ、優れたVSWRを示します。だからこそ効率が重要になります。
効率:実際にアンテナから放射される電力の割合
放射効率は、アンテナに供給された電力に対する放射電力の比であり、導体損失と誘電体損失を含みます。「総合効率」にはさらに前述の不整合損失も含まれます。効率はパーセントまたはdBで示され、50%は−3 dB、70%は−1.5 dB、80%は約−1 dBです。
IoT機器の小型内蔵アンテナでは、セルラーのローバンド全体で40~60%が現実的かつ良好な結果であり、外付けアンテナでは通常60~80%に達します。効率は実使用時の性能を最も直接的に予測できる数値です。通信事業者が認証時に試験する機器のTotal Radiated Power(TRP、全放射電力)とTotal Isotropic Sensitivity(TIS、全等方感度)に直接反映されるためです。
利得:放射された電力の向かう方向
利得は、効率と指向性(アンテナが特定の方向にどれだけ強く放射を集中させるか)を組み合わせたものです:利得 = 効率 × 指向性。アンテナが電力を生み出すわけではないため、ある方向の利得が高ければ、必ず別の方向の利得は低くなります。
- dBiは理想的な等方性放射器を基準とした利得、dBdは半波長ダイポールを基準とした利得です。0 dBd = 2.15 dBiのため、2つのデータシートを比較する前に必ず単位を確認してください。
- dBicは、GNSSパッチなどの円偏波アンテナに使用されます。
- ピーク利得は、3Dパターン上で最も良好な一方向の値です。平均利得は全球面にわたる平均値で、dB表記では総合効率と数値的に一致します。
- 高いピーク利得は、固定のポイント・ツー・ポイント回線では有用です。一方、トラッカー、ハンドヘルド機器、車載機器のように向きが定まらない機器では、通常、高いピーク値よりも、効率が良く滑らかな無指向性パターンのほうが重要です。
規制上の上限も放射電力(EIRP)で規定されているため、利得が非常に高いアンテナでは、上限内に収めるために送信電力を下げざるを得ない場合があります。
データシートのその他の項目
- 偏波:セルラー、Wi-Fi、ISMアンテナの大半は直線偏波(垂直または水平)、GNSSは右旋円偏波(RHCP)です。送信側と受信側の偏波が一致しないと、信号が損なわれます。
- 軸比:円偏波アンテナにおいて、偏波が完全な円にどれだけ近いかを示します。低いほど良好で、GNSSでは天頂方向で3 dB以下が一般的な目標値です。
- インピーダンス:ほぼ例外なく50 Ωです。無線モジュールおよびケーブルと整合している必要があります。
- アクティブGNSSアンテナの場合:LNA利得、雑音指数(NF)、電源電圧および電流。初段アンプの雑音指数が、受信系全体の感度をほぼ決定します。
- 保護等級(IP67、IPX7)、動作温度、ケーブルの種類と長さ。ケーブル損失は無視できません。細い同軸ケーブルが数メートルあると、セルラー周波数で1~2 dB以上、5~6 GHzではそれをかなり上回る損失になることがあります。
測定条件の確認
最も重要な問いは、データシートだけでは完全には答えられないものです。すなわち、これらの数値はどのような条件で測定されたのか、ということです。外付けアンテナの数値は通常、規定のグランドプレーン上または自由空間で測定されます。内蔵アンテナの数値は、メーカーの評価ボード上で測定されます。お客様の筐体の中では、バッテリー、ディスプレイ、金属ブラケット、あるいはサイズの異なるPCBが近くにあるため、共振点がずれ、効率が変化します。
データシートは候補を絞り込むための手段と捉え、最終的な選定は実際の製品に組み込んだ状態で、電波暗室でのパッシブ測定、続いてアクティブOTA(TRP/TIS)試験により検証してください。Santa Fe Technologiesは、ご要望に応じて電波暗室での試験レポートを提供し、お客様の筐体に合わせたアンテナの調整やカスタム対応も行います。
簡易チェックリスト
- VSWR/リターンロスの数値は、中心周波数だけでなく、必要なすべての帯域をカバーしていますか。
- 効率は帯域ごとに記載されていますか。また、それはピーク値ですか、平均値ですか。
- 利得の単位はdBiですか、dBdですか。また、ピーク値ですか、平均値ですか。
- 測定はグランドプレーン上、自由空間、評価ボード上のいずれで行われましたか。また、その条件はお客様の製品にどの程度近いですか。
- ケーブルとコネクタの損失は含まれていますか。